取合せを考える
取合せを考える
取合せとは茶会を開く上で、客をもてなすのに必要な道具の組合せに趣向を凝らす事です。使う道具を決める上で基準となるのは、その茶会の主題であったり、茶会が開かれる季節などでしょうか。ここでは取合せについて考えていきたいと思います。茶の湯をこよなく好む人の事を数寄者や茶数寄などと呼びますが、“数寄”というのは“好き”の当て字です。この数寄というのは数を寄せると書くので沢山の道具を集めて、その中から吟味して決めていく意味合いも感じられます。
主題(テーマ)を決める。
亭主として茶会を開く事が決まれば、その茶会のテーマを決めます。このテーマというのは年中に沿った行事や、春夏秋冬の自然の景色を演出したり、物語であったり、初めての茶会や茶席開きなどの披きや年の賀を祝う慶事。追悼や茶匠忌などの仏事。例えば、四月で“花見の茶会”であれば必ず桜の意匠の茶道具が使われます。桜を彷彿とさせる物がなければ花見として成り立たないからです。
同種の物は極力使わない。
同じ産地や同種の物はなるべく避けます。同じ物を使ってしまうと平坦な取り合わせとなってしまいます。三名の客がいるとして茶の心得が無い方にであれば桜の色絵茶碗を三枚出しても喜ばれますが、ベテランの方が相手ですと例えば、正客に赤楽(赤からピンク色)を使い、次客に花の紋に見えるような花三島、最後に色絵の桜茶碗をお出しするなどの一工夫があった方が良いかと思います。客も赤楽を桜の色と捉えたり、三島に散った花びらと見て趣向を汲み取られたり、奥行のある取合せと感じられるかと思います。但し、大寄せなど数が必要で止む負えない場合は順番などなるべく距離をとって使う方がきれいかと思います。
間接的に表現する。
3月の桃の節句では水指などで菱形の物を使ったりしますが、菱餅への間接的表現といえます。宗全籠に秋草を生け、武蔵野や兎の香合でも置き合せ円相のみの軸をかけてみれば〇は満月にも見えます。裏千家・圓能斎好の亀蔵棗は星の並びを表し本来、七夕や陰陽五行に用いましたが、聖夜の星にかけてクリスマスにも用いたりもできます。深い関連性が見い出せ、尚且つ美しく収まるようでしたら、従来の使い方にとらわれない表現も面白いかもしれません。
道具に対して話を付随させる。
写し物であれば本歌の伝来や逸話。例えば利休所持写の道具を数点併せれば、利休の時代を感じさせ利休の話となります。茶会を催す場所に関連する意匠であればその土地に関する歴史の話。名工の作なら作者の話。どんな些細な点でも話題として関連付けておくと取合せはより深みが増す気がします。