一楽、二萩、三唐津
古くより茶人が好んだ抹茶茶碗の順番です。三者国産の焼き物で、特に楽焼は類のない焼き物と言える。萩焼と唐津焼の基とされたのはやはり高麗茶碗だと容易に推測できますが、高麗焼の写で終わる事なく独自の進歩を遂げている。いずれも、茶の馴染みが良く、見た目、味わいともに茶の湯に優れていると言えます。
楽焼 (らく やき)
京都の焼物。黒の楽碗(宗易形)は千利休が追求した完成形といえるのではないでしょうか。轆轤を使わず手捏ねでヘラで整形するなど他の焼物とは異なる。楽茶碗は非常に繊細で、赤楽は更に焼成温度が低温の為、慎重な扱いが必要である。物を大切に扱うという茶道の心が感じられる道具であり、精神世界にも通じ、日本にとどまらず海外をも魅了する。楽家は初代・長次郎より歴代が名品を残し現在まで続く。楽家を本家とし、大樋焼や吉向焼などの窯元も有名である。
萩焼(はぎ やき)
山口県萩市の焼物。萩焼の魅力は素地と釉薬の収縮の違いによって生じる貫入による「七化け」といわれる変化である。使い込むことにより、茶が入り枯れたような味わいが出る。釉薬は萩特有の長石釉や枇杷釉は絶品である。また、高台のさまざまな造形があり見所である。
豊臣秀吉公の「文禄・慶長の役」の際、李敬(弟・松本萩)と李勺光(兄・深川窯)を連れて帰り焼かせたのが始まりとされます。萩焼は一時衰退の危機にあったが十二代坂倉新兵衛により、今の萩があり中興の祖とされる。のちに三輪家より人間国宝を輩出するまでになる。現在では松本窯の坂家や三輪家、深川窯の坂倉家、田原家、新庄家などがある。
唐津焼(からつ やき)
佐賀県唐津市の焼物。唐津焼の魅力は焼き上がり、即ち火の芸術です。登り窯で焼かれた唐津茶碗は非常に深みのある発色で素地の土見せ(高台)も印象的です。作行は非常に多く絵唐津、皮鯨、朝鮮唐津、斑唐津、粉引唐津、三島唐津、黒唐津、彫唐津、奥高麗、他、多岐にわたりある。唐津焼の起源は古く諸説あるが、文禄・慶長の際に朝鮮より陶工が渡来し連房式登り窯や蹴り轆轤などの技術が伝わる事により今の原型がある。その後、衰退復興を繰り返す唐津焼も中里無庵や西岡小十などにより古唐津の技術が復興された。